Hosei Erasmus Mundus Program Euro Pholosophy

Hosei Erasmus Mundus Program, Euro Pholosophy - Over the two academic years 2008-9 and 2009-10 at Hosei University, classes for the first semester of "Euro Philosophy", an EU Erasmus Mundus Master Program, have taken the form of one-month intensive lecture series. This is the first instance in Japan of administering such a large-scale intensive lecture series within the Erasmus Mundus Master Program.

report

ペーテル・センディ先生の授業 (2015)

パリ西ナンテール大学、ペーテル・センディ先生による講義が6月1日~3日にかけて、3回行われました。講義のテーマは「イマージュの裏側―iconomieへの提言」です。Iconomieとは、icon(=image) と economie を合わせた造語で、現代社会におけるイメージの氾濫がここではお金になぞらえられています。講義では、ジル・ドゥルーズやウォルター・ベンヤミン、マリ=ジョゼ・モンザンのテキスト、さらに、ローベル・ブレッソンやブリアン・ドゥ・パルマの映像が多数参照されつつ、議論が進められました。

「金銭は、映画が提示し表側で築くすべてのイメージの裏面にあたるのだから、金銭についての映画はどれほどの暗黙にであっても、すでに映画中映画、ないし映画についての映画である」(*)というジル・ドゥルーズが『シネマ2』で語った一文を考えるところから授業は始まり、この一文を考え続けることで授業は展開されていきました。1枚の紙の表に映画という面があるとすれば、裏には金銭という面があります(映画にはお金がかかります)。金銭についての映画がそうであるように、それを折り曲げて映画の面が内側で金銭の面が外側になるようにするとき、「イメージの裏側を見る」ということが可能になります。

いろいろな映像を資料として見せていただきました。中でも印象に残った二場面を紹介します。一つ目は"Les Sopranos"(HBO)のワンシーンです。親子がキッチンにいて、亡き父の復讐を果たした息子(トニー)は手に紙幣を持ち冷蔵庫の前に立ち、母親は椅子に座って亡き夫の遺影を見ています。冷蔵庫の扉に磁石で貼られているたくさんのテキストとイメージの一つ"One Day At A Time"のTimeだけが見えるように、息子は紙幣を重ねて貼りつけます。その場面は"Time is money"、つまり、息子の行為は'金銭=時間(借り)'であることを示しています。また、そのときに母親がテーブルに置いてある写真立てをひっくり返すのは、「イメージの裏側を見る」ことを示唆しています。イメージの裏側にあるのは時間なのです。

二つ目は"Pickpocket"(ブレッソン)のワンシーンです。舞台は、パリ、リヨン駅の発車間際の電車の中。スリ集団が車内で乗客にばれないように、華麗なテクニックを駆使して次々に金品を盗む場面です。この場面において、財布が盗まれスリ集団の中で回されることは、お金が回っていることを示します。金銭は流通してのみ価値を持ちます。映画のイメージもまた同じです。さらに、時計がすられたことは、ここで盗まれているのが実は時間であったことを意味します。このように、金銭を扱う映画では、可視的で不透明な金銭のイメージの裏側で、時間という不可視的で透明なものこそが示されていくのです。

三日間の講義ではこうして、ドゥルーズの唱える難解な「時間イメージ」が見事に展開されていきました。

(*)『シネマ2*時間イメージ』 ジル・ドゥルーズ著 宇野邦一他訳、法政大学出版局、2006。

授業風景