Hosei Erasmus Mundus Program Euro Pholosophy

Hosei Erasmus Mundus Program, Euro Pholosophy - Over the two academic years 2008-9 and 2009-10 at Hosei University, classes for the first semester of "Euro Philosophy", an EU Erasmus Mundus Master Program, have taken the form of one-month intensive lecture series. This is the first instance in Japan of administering such a large-scale intensive lecture series within the Erasmus Mundus Master Program.

report

村上靖彦先生の授業 (2015)

4月16日には終日、午前と午後で3回に分けて、大阪大学の村上靖彦先生による講義が行われました。内容は『日本における統合失調症患者のホームケアの現象学』です。講義では、フッサール現象学からの考察を基に、統合失調症の、とくに治療に関わる人々を見ていきました。

第1回は「日本における精神科の歴史」と題して、第二次世界大戦後の日本で行われていた精神疾患患者に対する治療のあり方を歴史的に見ていきました。当時、特に暴れてしまう可能性のある精神病患者は外の世界から隔離した状態で治療が進められていました。しかし、それは患者の自由を束縛してしまうもので、時には暴力沙汰になることもあり、遂には死亡事故をまで生じさせました。そこにはたいへん暗い歴史があったわけです。この事故がきっかけとなり、現在では(1987年以来)、暴力を禁止し、精神病患者の人権を守る法律が制定されています。

第2回はフッサールの現象学を基にした考察から、現代行われているACT (Assertive Community Treatment) について学んでいきました。ACTは1970年にアメリカで生まれた治療法で、これまでの患者の自由を束縛してしまう治療とは違い、患者の状況をありのままに受け入れ、在宅のままで、治療と生活とをともに地域で包括的に支援するプログラムです。日本では2003年に導入されました。それまでの現象学的精神病理学との対比で、このACTの特徴が語られました。

第3回、今回最後の講義では、統合失調症患者の看護に携わっている看護師の方に、村上先生が実際に行ったインタビューを基に、授業が進められました。統合失調症の場合、症状が重ければ、患者はどんどん自分の中で独自のルールを築き上げていってしまいます。「そんな症状に向き合っていく時、場合によっては、〈妄想デート〉をしているように受けもった人のニーズに答えていくようにする」という介助者の話がとても印象的でした。こうして、介助者が、患者一人一人の状況に合わせてその人の不安と向き合っていく、という接し方は、精神科の治療にだけではなく、現象学そのものの刷新にもつながるもの、ということです。私としては、この方法は、日常生活の中でも生かせることなのではないかと考えました。

授業は淡々と進められ、皆、村上先生の講義に真剣に耳を傾けていました。一度に3コマ分、計6時間にも及ぶ講義を受け、受講者にはその日はとても内容の濃いものとなりました。後日、当日の受講者と夕食を食べに行った際に、この授業のことも話題に登りました。「やっぱり」「なんか・・」といったテキストに載っていた、インタビューでの日本語が、皆の口から思わず飛び出して来ました。

(なお今回の講義内容は、近刊の村上靖彦先生の論稿:「仙人と妄想デートする ― ACTによる重度の精神障害者への在宅支援と反転された精神病理学」,『現代思想』,43(12),2015年5月号 で確認していただけます)

授業風景