Hosei Erasmus Mundus Program Euro Pholosophy

Hosei Erasmus Mundus Program, Euro Pholosophy - Over the two academic years 2008-9 and 2009-10 at Hosei University, classes for the first semester of "Euro Philosophy", an EU Erasmus Mundus Master Program, have taken the form of one-month intensive lecture series. This is the first instance in Japan of administering such a large-scale intensive lecture series within the Erasmus Mundus Master Program.

report

チエリー・オケ先生の授業 (2015)

2015年度のエラスムス・ムンドゥス・ユーロフィロソフィーの授業は、開会パーティの熱も冷めやらぬ翌4月7日、チエリー・オケ先生(リヨン第三大学教授)の「科学哲学」から、幕開けとなりました。

4日間計6回の講義の総タイトルは「科学とは何か。問題への取り組みと論争」です。科学とその歴史を通覧しつつ、科学と哲学のあいだに横たわる諸問題を浮かび上がらせる、大変中身の濃い授業が展開されました。

第1回の授業では、まず導入として、西洋の近代科学は果たして普遍的かという本講義の根本問題が、科学の東洋的あり方を示唆する谷崎潤一郎(1886-1965)の『陰影礼讃』(1933)の言葉を引きつつ、巧みに提起されました。その後、科学的説明とは何かということ、さらには、科学哲学の基本的な用語や科学哲学の歴史の紹介が行われました。

第2回では科学の歴史そのものが検討され、さまざまな科学革命の事例と、科学史の哲学にははずせないクーン(1922-96)とバシュラール(1884-1962)の立場が紹介されました。また、科学の客観性の4つの分類が、ダストンとギャリソンの昨今の研究(Lorraine Daston & Peter Galison, Objectivity, New York, Zone, 2007)に基づいて、新鮮な見取り図の形で提示されました。

特に印象深かったのは第3回の「フェミニストのエピステモロジー」です。この講義は、科学史における女性科学者の紹介だけではなく、科学的知識が内包しているジェンダーの問題にも鋭く迫るもので、過去の科学の客観性を根本的に揺るがすものであったと思います。特に、ダーウィン進化論における性差観、リンネ(1707-78)の『自然の体系』(1735)に著された哺乳類という分類項目、さらには解剖学における女性骨格図の「女らしさ」の例からの、18世紀後半以降の自然科学にはジェンダーが投影され、一定の女性像がすでに要請されていたという指摘は、瞠目に値するものでした。授業中、学生たちも多く発言し、この回は、現代社会における多様な性のあり方を広く考えるエキサイティングな機会ともなりました。

第4回では社会と科学技術のつながりが、そして第5回では科学と規範の関係が検討された後、最終第6回の授業では、疑似科学と科学との「線引き問題」を中心に、ファイヤアーベント(1924-94)らの相対主義が取り上げられました。この日は、本プログラムの日本側責任者である法政大学の安孫子信先生も参加されました。授業の最後で、安孫子先生から、オーギュスト・コント(1798-1857)の説く実証主義による相対主義の乗り越えが解説され、2人の先生を巻き込んでの活発な質疑応答が展開される中、4日間の講義も幕となりました。

この6講義で科学の「客観性」の歴史を学び直し痛感されたのは、「科学とは何であるか」という問いは、「科学は何をすべきか」という問いに直結しており、未来に向けて、科学哲学は、純粋学問の牙城としての科学ではなく、対自然、対社会、対人間に開かれたものとしての科学を扱っていかなければならない、ということでした。そうでなければ、科学哲学は科学を本当に論じることにも、至らないでしょう。講義の期間中にオケ先生や学生たちとラーメン屋で昼をご一緒する機会も得ましたが、初めての「つけ麺」(麺とだし汁が分かれて出される料理で、麺にだしをつけていただく)を見て、「世界的にも科学と哲学の議論がいまだに離れている現状は、まるでつけ麺のようだ。しかし、最後には混ざりあう」と冗談を言いつつ、箸を口に運ばれたオケ先生が忘れられません。

講義開始!
図解するオケ先生
講義3日目の様子
和やかに笑いが起こることも