Hosei Erasmus Mundus Program Euro Pholosophy

Hosei Erasmus Mundus Program, Euro Pholosophy - Over the two academic years 2008-9 and 2009-10 at Hosei University, classes for the first semester of "Euro Philosophy", an EU Erasmus Mundus Master Program, have taken the form of one-month intensive lecture series. This is the first instance in Japan of administering such a large-scale intensive lecture series within the Erasmus Mundus Master Program.

report

カミーユ・リキエ先生の授業 (2014)

パリ・カトリック学院のカミーユ・リキエ先生による6回の授業が行われました。今回の授業では、シャルル・ペギー(1873-1914)の思想が紹介されました。(ペギーに関するリキエ先生のご業績として以下が上梓されています。« Métaphysique de l'événement. Péguy et le problème de l'insertion », dans Métaphysiques des possessions, D. Debaise (éd.), Paris, Presses du Réel, 2011)

19世紀後半に、ジャンヌ・ダルク(1412-1431)の故郷として有名なフランスのオルレアンに生まれたシャルル・ペギーは、哲学者というより、詩人や社会主義者として今日よく知られています。とりわけパリでの学生時代に、ベルクソン(1859-1941)に師事したペギーは、技術や産業の進歩を謳い、外的な財をひたすら追求する近代社会に鋭い批判を加えました。ただ彼の問題意識は、単純に政治理論や社会体制に向けられたのではなく、貧困や労働に苦しむ人々の惨状を目にした上で、社会を形成する民衆の内面性に向けられました。つまり、ペギーの生涯にわたる関心事は、利益を追い求めた結果、形骸化して堕落してしまった既存の社会を変革すること以上に、個々の精神の内的生命に呼びかけることにあったのです。ここにベルクソンの決定的な影響を伺うことができます。例えば、彼の晩年の著作『われらの青春』(1910)にあるように、「すべては、神秘的なものに始まり、政治的なものに終わる」のです。そしてペギーの重要視した精神面での変革を可能にするのは、苦痛を負う一人一人を救済しうる原理であり、それは世俗化する以前のキリスト教の世界観へとつながります。ここでベルクソンとの関わりと並んで挙げなければならないのが、ペギーの思想におけるパスカル(1623-1662)の影響でしょう。というのも、ペギーの時代より二世紀以上昔のフランスに生まれたパスカルは、社会に生きる人々の悲惨を目にした結果、厳格なキリスト教徒として、人間の精神や道徳の観点から救いの道を求めたからです。じっさいペギーは、一生を通じてパスカルの遺した思想の理解に努めました。例えば、パスカルは『パンセ』(1670)において、世の中に「三つの秩序」を認め、「物質の秩序」の上に「精神の秩序」、そして最も高い領域に「愛の秩序」を見出しましたが、ペギーも同様に、どんなに物質が満たされたとしても超えることのできない精神の次元は、さらにキリストが実践したような、苦悩する他者への救いの情熱を伴う愛の次元に至らなければならず、そうでなければ、あらゆる社会的行為もむなしいものと考えたのでした。このようにして真理を追究しようとした二人の人物が、パスカルは39歳で、ペギーは41歳で、ペギーの場合は第一次大戦の戦場に斃れてですが、それぞれの短い生涯を終えたことも筆者には驚きでした。

カミーユ・リキエ先生