Hosei Erasmus Mundus Program Euro Pholosophy

Hosei Erasmus Mundus Program, Euro Pholosophy - Over the two academic years 2008-9 and 2009-10 at Hosei University, classes for the first semester of "Euro Philosophy", an EU Erasmus Mundus Master Program, have taken the form of one-month intensive lecture series. This is the first instance in Japan of administering such a large-scale intensive lecture series within the Erasmus Mundus Master Program.

report

サラ・グインダーニ先生の授業 (2014)

パリ第8大学のサラ・グインダーニ先生による4回の授業が行われました。

芸術や美学と哲学との関係の研究を専門とされているグインダーニ先生は、プルースト(1871-1922)の研究者でもあります。今回の授業のテーマは、プルーストが、大著『失われた時を求めて』(1913-1927)において、その後の20世紀の哲学者に与えた多大な影響を考察するものであり、影響を受けた哲学者として、メルロ=ポンティー(1908-1961)、ジル・ドゥルーズ(1925-1995)、ポール・リクール(1913-2005)、ロラン・バルト(1915-1980)などが挙げられました。(プルーストに関するグインダーニ先生の著作の一例として以下が挙げられます。Lo stereoscopio di Proust. Fotografia, pittura e fantasmagoria nella Recherche Le stéréoscope de Proust. Photographie, peinture et fantasmagorie dans la Recherche, Milan : Edizioni Mimesis, 2005.)

本講義で、筆者にとって最も興味深かったのは、プルーストとドゥルーズの関係でした。というのも、ドゥルーズは、初期の著作『プルーストとシーニュ』(1964)において、『失われた時を求めて』の解釈を試みていますが、そこにおいて問題とされるのは、プルーストによる、マドレーヌについての有名な描写に代表されるような「無意志的な記憶」ではないからです。すなわちドゥルーズは、プルーストの作品の基礎が、一般的に知られるような、過去の記憶の想起にではなく、「シーニュの習得」にあると主張します。「シーニュ」とは、「記号」や「しるし」など様々な訳が可能な単語ですが、ドゥルーズによれば、あらゆる事物はシーニュを発しており、それを解釈することが、「習得」へとつながります。『失われた時を求めて』で中心テーマとされる記憶の働きも、習得のための一つの手段であり、こうした習得の物語がこの作品に統一性を与えているとするのがドゥルーズの立場です。この立場によれば、『失われた時を求めて』は、シーニュを発する4つの要素から成り、つまり、空虚な「社交界のシーニュ」、偽りに満ちた「愛のシーニュ」、物質的な「感覚的シーニュ」、そして、本質的な「芸術のシーニュ」です。ドゥルーズによれば、プルーストの作品は、このようにして、シーニュを習得させ、シーニュを生産して、読者に効果を与えるものとされるのです。

以上は、4回にわたるサラ先生の授業の一部分ですが、記憶によって過去を探求していくという『失われた時を求めて』についての読者の一般的なイメージを覆すドゥルーズの解釈は、革新的なものであるとともに、その後のドゥルーズ自身の哲学が、プルーストの作品の影響を少なからず受けていくことを深く考えさせられる講義でした。

サラ・グインダーニ先生
授業の様子