Hosei Erasmus Mundus Program Euro Pholosophy

Hosei Erasmus Mundus Program, Euro Pholosophy - Over the two academic years 2008-9 and 2009-10 at Hosei University, classes for the first semester of "Euro Philosophy", an EU Erasmus Mundus Master Program, have taken the form of one-month intensive lecture series. This is the first instance in Japan of administering such a large-scale intensive lecture series within the Erasmus Mundus Master Program.

report

授業風景その3 (2012)

EUからの教員として、アレクサンドル・シュネル氏に続き、3番手を務めるベルギー・ルーヴァン大学のグレゴリー・ジャン氏の6回にわたる授業が開講されました。

今回の講義のタイトルは「現前の形而上学、情感性、合理性」でした。(ジャン氏の業績のうち、本講義の内容の一部に関するものとして、以下の論文を挙げます。« Histoire et Être. Heidegger et l'esquive du présent », dans Phénice, numéro spécial : « Le Présent », mai 2009, pp. 55-70.)

筆者の理解した限りでの本講義の要点は、以下の通りです。

―ここでは、まず『声と現象』(1967)においてデリダ(1930-2004)が批判した、「現前の形而上学」に焦点があてられます。

―そこにおいて批判の的となったように、ハイデガー(1889-1976)は、『存在と時間』(1927)の中で、「現前」における「過去」の問題を中心に据えた議論を試みたのでした。そのハイデガーの議論は「過去の解放」という意味においては、ミシェル・アンリ(1922-2002)に通じるものがあり、ハイデガーの「死へ臨む存在」にアンリは「発生の現象学」を置き換えた、ということもできます。

―アンリはさらに、これを「自己触発」という概念を使って、さらに先鋭化しようとした印象を受けます。アンリの「自己触発」は、ハイデガーが『カントと形而上学の問題』(1967)で呈示したような、「地平(世界)」を介する「自己触発」とは異なるもので、アンリはそこにおいて、より際立った仕方で「生」の直接的な「情感性」を強調したと言えます。

―しかし、ジャン氏の解釈によると、アンリの思索は、そのようにして、「過去」の内に認められる根源的な次元に「情感性」を見出しつつも、「主観性」と「ア・プリオリ」とのつながりを「情感的」に再定義することで、むしろそこに「合理性」を露呈させている、と言うのです。そして、その場合、そこにおいて生じる「情感性」と「合理性」の関係を理解するために、ジャン氏が手掛かりにしたのは、キルケゴール(1813-1855)でした。

以上、ジャン氏の講義で中心的に扱われたのはミシェル・アンリです。アンリの思想に関する著作や論文は、日本において未だそれほど多くなく、今回、アンリの専門家によって日本でまとまった講義が行われたというのは、大変に貴重な機会であったと感じました。



ジャン氏