Hosei Erasmus Mundus Program Euro Pholosophy

Hosei Erasmus Mundus Program, Euro Pholosophy - Over the two academic years 2008-9 and 2009-10 at Hosei University, classes for the first semester of "Euro Philosophy", an EU Erasmus Mundus Master Program, have taken the form of one-month intensive lecture series. This is the first instance in Japan of administering such a large-scale intensive lecture series within the Erasmus Mundus Master Program.

report

グレゴリー・ジャン講演会 (2012)

法政プログラムにおけるEUからの教員の一人で、ベルギー・ルーヴァン大学のグレゴリー・ジャン氏の講演会が、4月16日の15時より、東京大学文学部(本郷キャンパス)法文二号館二階教員談話室にて行われました。

東京大学の鈴木泉先生の司会のもと行われた本講演会のテーマは、「情感性とミシェル・アンリにおける既在性の形而上学」でした。(ミシェル・アンリ(1922-2002)の著作の編者としても知られるジャン氏の業績の一例として、以下の論文が挙げられます。« L'être-soi et l'être-seul : le problème de la solitude dans la phénoménologie de M. Henry », dans PhænEx. Revue de théorie et culture existentialistes et phénoménologiques, Vol. 6, n°2, « La solitude », 2011, pp. 109-130.)

本講演での発表方法は、ミシェル・アンリの主著『顕現の本質』(1963)を手掛かりに、フッサール(1859-1938)、ハイデガー(1889-1976)、デリダ(1930-2004)などを論客として置いて、「現前」、「情感性」、「既在性」といったアンリにおける主要概念の解釈を試みるものでした。

筆者の理解した範囲での本講演の要点は以下になります。

ジャン氏が提起した問題は、デリダが『声と現象』(1967)において批判的にとり上げた「現前の形而上学」の内に、アンリの哲学も入ることになるのか、ということでした。というのも、「生の現象学」を標榜したアンリは、志向性を自己に内在する情感性に重ね合わせて考えましたが、それは自己に「永遠に現前するもの」と見なされたからです。ただジャン氏は、アンリの言うこの「永遠の現前」は、過去を退場させるようなものではなく、反対に「絶対的な過去」のことなのだと主張しました。情感的自己に現前しているのは現在ではなく過去だというわけです。こうしてジャン氏によれば、アンリが展開したのは「現前の形而上学」ではなく、「既在性の形而上学」ということになります。今回の発表においてジャン氏は、アンリ思想の解釈の中心に時間の問題を置いており、私はそこに大変興味深いものを感じました。

およそ一時間におよぶ発表の後、しばしの休憩を挟み、活発な質疑討論の時間がもたれました。この講演会を通じて、ミシェル・アンリの思索の独自性が再評価されることになったのは間違いなく、20日より始まるジャン氏の講義への関心も大変に高まることになりました。


左:ジャン氏、右:鈴木先生
会場